1986 年 27 巻 8 号 p. 1155-1160
ラット肝臓を用いた実験が最近,増加しているが,本邦で発行されている動物実験書をみるとラット肝葉名は種々に記載されており,実験結果の記載に混乱が生じる恐れがある.著者はCouinaudの人肝解剖書に基づきラット肝葉の解剖学的検討を行った.その結果,ラット肝葉は5葉からなるが,左からそれらをA, B, C, D, E葉と名付けると,A葉は左外側葉,鎌状靱帯の付着したB葉は左内側葉,小さい紡錘状のC葉とD葉は各々,右内側葉,右外側葉,2つの突起を有するE葉は尾状葉とすると人肝の区域と基本的に一致することが分った.また,2区域を有するB葉を左区域,右区域に,尾状葉を左突起,右突起に分けると人肝の肝区域により合致することが認められた.
本報告を契機にして,ラット肝葉に関し統一的名称が確立されることを期待する.